なぎさ心理相談室|宇都宮の心理カウンセリング

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場面緘黙(選択性緘黙)について

不安そうな女の子

場面緘黙とは

場面緘黙は、米国精神医学会 (APA) が定めた「精神障害の診断と統計の手引き (DSM)」の2022年改訂版 (DSM-5TR) の診断基準によれば、「他の状況で話しているにもかかわらず、特定の社会的状況において、話すことが一貫してできない」 状態であると定義されています。不安症群の中の一つであり、脳の損傷や先天的異常などの器質的な障害ではないと考えられる症状です。特に子供に見られ、特定の社交的な場面で話すことができなくなる症状です。この症状は通常、学校や公の場など他人と関わる場面で現れ、普段は普通に話すことができる状態から変わってしまうことが特徴です。場面緘黙は主に社交不安障害の一部とされ、緊張や恐怖感が原因として挙げられます。そのため、適切な治療的介入を行えば症状の改善が可能だと考えられます。逆に、積極的な介入が行われなければ、症状が改善されずに固定化し、成人後に社会的機能に重篤な悪影響を及ぼしかねないと思われます。
*当相談所では、「選択性緘黙」という言葉は、まるで緘黙症状のある本人がその状態を選択しているかのように思えるという指摘から、「場面緘黙」という言葉を用いるようにしています。

より厳密な医学的診断基準として、DSM-5TRでは下記の5項目が規定されています。
1.他の状況で話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況 (例:学校) において、話すことが一貫してできない。
2.その障害が、学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている。
3.その障害の持続期間は、少なくとも1ヶ月 (学校の最初の1ヶ月だけに限定されない) である。
4.話すことができないことは、その社会的状況で要求される話し言葉の知識、または話すことに感じる快適さが不足していることによるものではない。
5.その障害はコミュニケーション症 (例:小児期発症流暢症) ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。

場面緘黙の理解と対応策を周囲の人々が考えることは重要です。また、場面緘黙に苦しむ人々をサポートするために、適切な専門家や支援グループに相談することも有効です。場面緘黙の人々の状況や感情を尊重し、受け入れる姿勢が、彼らにとって大きな助けとなるでしょう。

場面緘黙に関するQ&A

場面緘黙について、よくある疑問にお答えします。

Q: 場面緘黙の子どもを持つ親として、どのようにサポートすれば良いですか?
A: 場面緘黙を持つ子どもには、理解と忍耐を持ち、プレッシャーをかけずにコミュニケーションを図ることが大切です。また、子どもが自分自身で表現できるような環境を整え、専門家のアドバイスを受けることも有効です。本人ができそうなことを親が代わりにやってしまうことはなるべく避け、本人に過大な負担にならない程度の負担を与えることも必要でしょう。
例えば、挨拶を促された場面で、親が代わりに挨拶してしまうのではなく、本人が会釈をするなどの行動を取るまで少しの間待つ、などです。

Q: 場面緘黙の人とのコミュニケーションのとり方について教えてください。
A: 場面緘黙の人とのコミュニケーションには、相手のペースや状況を尊重し、無理に話をさせることなく、場合によっては非言語コミュニケーションや筆談などの手段を取ることが重要です。

日常生活でのサポートとコミュニケーション
日常生活でのサポートとコミュニケーションについて
場面緘黙を持つ人々が日常生活で円滑に過ごすためには、周囲の人々が適切なサポートとコミュニケーションを行うことが重要です。
まず、コミュニケーションにおいては、場面緘黙を持つ人のペースや方法を尊重することが不可欠です。無理に話をさせたり、無言を否定するような圧力をかけないようにしましょう。
また、非言語的なコミュニケーション手段を活用することも有効です。身振り手振りや絵カードなどを使って意思疎通を図ることで、ストレスを減らし、コミュニケーションを円滑にすることができます。
日常生活においては、場面緘黙を持つ人が快適に過ごせる環境を整えることも大切です。静かな場所での食事や勉強、リラックスできるスペースの提供などが役立ちます。
最も重要なのは、場面緘黙を理解し、受け入れる姿勢を持つことです。場面緘黙を持つ人々は、自分のペースで生活することが大切です。そのためには、周囲の理解とサポートが不可欠なのです。

教育と職場での配慮

場面緘黙の子どもたちや若者が学校や教育機関で十分なサポートを受けることは重要です。教育現場では、教師やカウンセラーが場面緘黙を理解し、子どもたちが自分自身を表現しやすい環境を提供することが求められます。
特別な配慮や個別支援を必要とする場合は、学校と保護者が緊密に連携し、適切な支援策を検討することが重要です。子どもたちが安心して学び、成長できるように、教育機関全体で環境づくりに取り組むことが求められます。
また、職場においても場面緘黙の人々がストレスなく働くための配慮が必要です。コミュニケーションスタイルやワークスタイルに合わせた柔軟な対応をすることで、場面緘黙の人々が自分らしく活躍できる職場環境を整えることが大切です。上司や同僚が理解と協力を示し、環境が整っていることが、場面緘黙の人々にとって働きやすい環境を築く一助となります。

場面緘黙の心理治療

場面緘黙の症状については「家庭での会話」を「学校での会話」へと段階的に広げていく行動療法的アプローチが最も効果的です。「段階的エクスポージャー法」といって、不安の低い場面から不安の高い場面で発話チャレンジを行います。場面とは「人・場所・活動」の3つの要素で構成されています。すでに話せる場面から、1回につき1つだけ要素を変えて、スモールステップで発話のチャレンジを行います。「楽しく」「自信をつけながら」「場数を多く」行うことが大切です。

場面緘黙は、「専門家だけで治せる症状」ではありません。話せるようになりたいとういう本人の意欲のもと、家庭と学校が協力して発話チャレンジを行います。人と話せた経験をたくさん積んで、話す自信をつけていきます。そのため、シールやスタンプなどを用いて達成した結果を見える化する「トークンエコノミー法」も効果的です。

人前でガムを噛んだり、シャボン玉や笛など口を動かす遊びを行ったり、吐く息から無声音、発声から発話へと進める「シェイピング法」という方法もあります。子どもによって、数字数え、質問カードやカルタ、音読が発声しやすいこともあります。しりとりやなぞなぞでうまくいく子どももいます。

行動療法的アプローチを進める前提として、まず家庭と学校が協力して「安心できる環境」を調整することが大切です。発話以外の領域についても、子どもの支援ニーズを把握しましょう。心身の状態が安定せず、「段階的エクスポージャー法」が行えない状態の子どももいます。例えば、家庭で、かんしゃくや学習の困難、身体症状などがある場合は、緘黙症状改善に取り組む前に先にこれらに対応する必要があります。

また、社交スキルの不足のために場面緘黙の症状がある子どもや緘黙のために社交練習の機会が不足する子どもがいます。状況に応じた振る舞いや、子どもが社会生活を営んでいくために必要なスキルを学ぶ「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」が有効な場合もあります。

不安症については、思考パターンに働きかける認知療法もよい影響があります。適度な運動、呼吸法や筋弛緩法、マインドフルネス・ヨーガやタッピングタッチ等の身体からのアプローチも、ストレスケアとして不安緩和に効果があります。

まとめ

場面緘黙は、言葉を話すことが難しい状態を指し、生活のさまざまな場面で影響を及ぼします。場面緘黙を持つ子どもや大人に対して理解を持つことで、彼らが自信を持って積極的にコミュニケーションをとることをサポートできます。また、場面緘黙の人々には、必要ならば専門家の支援を受けることや、自分のペースで行動することを促すことが有効です。環境の変化や新しい状況に対処する能力を伸ばすためにも、場面緘黙を持つ人々が自分らしい生き方を見つけられるよう、サポートを行うことが重要です。

場面緘黙については、学童期であれば学校との連携などを含め、本人の治療の方法を探ることができます。成人であれば、ご自分の意思で治療を進めていくことができます。なぎさ心理相談室には、場面緘黙の子どもを複数支援してきた経験のある心理士/師がいます。思い当たるところのある方は、どうぞまずはお気軽にご相談ください。

場面緘黙の方、またそのご家族の方は、ぜひなぎさ心理相談室にご相談ください。
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